- 葛西俊治
「平均値は分かったけれど…。」―母集団無記のお話―
- 「心理学ワールド」第42号 pp21-31,2008から new!
- 葛西俊治
「関連性評定質的分析による逐語録研究
― その基本的な考え方と分析の実際 ―」
- 論文: 札幌学院大学人文学会紀要 第83号,61-100,2008 new!
発想法という位置づけにあるKJ法に一定の制限を加えることによって、林の数量化理論三類、二類、一類という数理的分析法による把握と、長田による形式概念解析ソフトによる分析を行うもので、質的アプローチと数理的アプローチの統合をはかっている。グランデッド・セオリーGTAによる質的研究が抽象度の高いカテゴリーを輩出することで、詳細な実態把握に難点を抱えるのに対して、KH法(略称)は語り手の具体的で個別性の高い内容を見落とさない工夫として、提喩的把握という言語学的視点を取り入れている点に特色がある。また、「要約モデル」と「解釈モデル」の提起に際して、内的妥当性・外的妥当性についての明確な位置づけを試みている。
キーワード:
KJ法、数量化理論、形式概念解析、オートポイエーシス、解釈モデル、提喩的認識、内的妥当性、対偶
-
現在の状況: KH法はすでに実際の研究論文作成に用いられ一定の実績を積み重ねてきている。たとえば、「強迫観念についての把握」「性教育を指導するピア・カウンセリングの問題点」「病院における看護師の意識」「糖尿病におけるノン・コンプライアンス言動に関わる把握」「援助行動における意識」「高齢での介護における希死念慮」等々、いずれも逐語録あるいは自由記述回答を対象として質的および数理的解析が行われている。
GTAやIPAにおける「サブカテゴリーとカテゴリー」といった抽象化によって生じるような問題を乗り越え、現場の実態把握とそれに基づくモデル提起に一定の成果が得られている。
★逐語録の関連性評定質的分析について
KJ法的アプローチにいくつかの制限をおくことで、「空間配置図」から数量的な分
析図とラベル構造の分析図を生成できます。そのための「分析の実際」については2007年後期からサイトにて公開しています。
これに関連して、「一人から少人数に対する質問紙の質的分析」が「形式概念解析」(長
田博泰:札幌学院大学社会情報学部社会情報学科教授による解析プロ
グラム: 6/21,2007追加) によって分析可能となっています。
GTAやIPAのコード化作業によって失われがちな現場の実際的情報を維持しながら質的研究を行う「関連性評定質的分析」の理論化と実際的方法が整って
きましたので、修論や博士論文あるいは質的研究を用いる心理・看護・教育などの領域における研究をサポート中です。関心のおありの方は下記のサイトについ
てメールでお尋
ね下さい。(
2/28, 2007)
↓
★コンジョイント分析の面談時実行と即時提示による聞き取り
長時間の聞き取
りによる逐語録などの分析は、KJ法的な方法では時間がかかりすぎるため、あまり現実的ではありません。したがって、KJ法的な方法を用いるためには、聞
き取りそのものがより適確であり、テーマに即した適切な聞き取りを比較的短い時間で実現することが重要となります。
その場合、面談時にテーマに関する簡単な評価作業を行ってもらい、その内容を即座に分析して被検者に提示することによって、聞き取りの内容をより精緻な
ものにしていくという方法をとることができます。コンジョイント分析はテーマに関する複数の要因について、被検者にとってそれぞれどの程度の重要性がある
かを割り出す分析法で
す。これを面談時に実施して直ちに分析し、得られた結果を被検者に提示することによって聞き取りをより適確なものとすることができます。(PAC分析、すなわち個人別態度構造分析とは
違います
が発想には似た点があります。)
上に示した山崎奈穂『中学教師と臨床心理士の、子どもの援助様式についての一考察 ― 8名へのインタビュー調査による事例研究的アプローチ ―』では、コンジョイント分
析の面談時実施・即時提示方式によって、スクールカウンセラーと教師との不登校児に対する対応の微細な差違を見いだすことができました。
このように、質的アプローチをより適確にものにするために、数量的方法を併用するという方針で「関連性評定質的分析」も組み立てられています。
(4/15, 2007)
|
葛西俊治
「心理学的研究における統計的
有意性検定の適用限界」
- 論文: 札幌学院大学人文学会紀要 第79号, pp.45-78, 2006
長年問題となっている有意性検定について吟味し、研究結果の一般化を求めて行われる統計的検定の厳密さとは裏腹に、得られた検定結果の解釈が「たとえ話」
的な位置づけにあることを指摘している。
キーワード:
解釈的質的心理学、数量的心理学、統計的有意性検定、有意水準、母集団、標本抽出、人間の斉一性、一般意味論、無記
-
現在の状況: こうした一編の論文が書かれることによって心理学領域などでの数量的アプローチの実情が
一挙に変化するはずもありません。ただし、統計的有意性検定によって研究結果の一般性を主張しうるという理解は、少なくとも心理学を含む社会科学領域にお
いては相当に困難になったといえます。そのため、解釈的アプローチや個性記述的アプローチ(idiographic
approach)が、「一般化に至らない」という論拠のみによって誹謗されるといった「暴挙」に対しては一定の歯止めとなっていると考えられます。
葛西俊治
「解釈的心理学研究における理論的基
盤とア
ブダ
クションに基づくモデル構成法」
- 論文: 札幌学院大学人文学会紀要 第78号,pp.1-26, 2005
面接などでの逐語分析・プロトコル解釈が提喩的認識によって一般的に了解される経緯を、解釈的アプローチの基本構造と共に提示。その際、現象学的観点では
なく、認識の比喩性という点に「了解」の基盤を求めている。
キーワード:
質的心理学、解釈的アプローチ、措定、事実性、アブダクション、提喩、一般意味論、多重併存モデル
- 現在の状況:
「アブダクションに基づくモデル構成法」という方
法は、川喜多二郎によるKJ法の理念と共通性がありま
す。「演繹・帰納」の間に挟まっている「アブダクションabduction」(C.S.Pierce)を「発想法」と名付けたのが川喜多二郎であること、
その具体的実践技術がKJ法である訳です。この論文は結果的にKJ法の理論的背景の一端を示したことにもなるでしょう。この論文で述べている「アブダク
ションに基づくモデル構成法」は技法としてのKJ法と親和性が高いので、現在、臨床心理学的な面接記録・プロトコルをKJ法的な発想を主柱にして構造化す
るという実践的技法の開発を行っています。2005年度の修士論文の一つ、山崎奈穂『中学教師と臨床心理士の、子どもの援助様式についての一考察 ― 8名へのインタビュー調査による事例研究的アプローチ ―』において、KJ法を応用した方法での研究が行われました。
- *2006年度の修士論文として、畑野美智子『子どもを亡くした母親の悲嘆に関する研究
〜
中年期に一人しかいない子どもを小児がんで亡くした母親との面接を通して』という研究が、対象者三名からの逐語録に基づいてKJ法的方法で行われました。
* 紀要に掲載された上記の論文はpdfファイルへの転換に伴って、
ページ番号・行数にズレがあります。
必要な方は別刷りを までご請求ください。
|