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自発構文の逆使役用法に関する調査
2005年7月15日〜 
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佐々木冠(←メールはこちらまで)


自発構文の逆使役用法とは

自発構文は述部が動詞語根に接尾辞-rasarが付加されたかたちになっている構文です。この構文にはいくつかの用法があります。代表的なものは、自発(非意図性を表す)、可能、逆使役です。この調査は、逆使役用法の成立条件を明らかにすることを目的としたものです。

逆使役はなじみのない用語かもしれません。簡単に定義を述べます。形態的に関連づけられる二つの述語があるとします。そして、二つの述語が意味的に次のような対応関係にあるとしましょう。CAUSEは因果関係を表す抽象的な述語です。

述語a:[出来事1]CAUSE[出来事2]
述語b:        [出来事2]
形態的に見て述語bが無標で述語aに接尾辞などのプラスαの要素が加わっている場合、述語aは使役構文の述語と見なされます。日本語(標準語)の「走る」に対する「走らせる」がその例です。使役は項が増えますので、他動詞化の一つと考えられています。
能動文:    彼が走る。  //hasir-ta//
使役文:コーチが彼を走らせた。//hasir-sase-ta//
一方、述語aの方が形態的に見て無標で、述語bに接尾辞などのプラスαの要素が加わっている場合は、逆使役と呼ばれます。逆使役は項が一つ減りますので、自動詞化の一つと考えられています。逆使役(anticausative)という概念は、Nedjalkov and Sil'nickij (1969)によって提唱されたもので、使役(causative)に比べて新しい概念です。Kulikov (2001)の2.5節にわかりやすい解説がありますので、ご覧ください。

北海道から北東北にかけて話されている自発構文にも逆使役と考えることができる用法が見られます。

能動文:誰かが大きな丸を書いた。   //kak-ta//
自発文:   大きな丸が書かさってる。//kak-rasar-teru//
能動文では、「出来事1」を引き起こした動作主が明示されます。一方、逆使役文では「出来事1」を引き起こした動作主は明示されず、「出来事2」に関連する名詞句(対象)のみが示されます。

同じ自動詞化構文でも受動文では以下に示すように動作主を表すことができます。

その論文はチョムスキーによって書かれた。
受動文では、このように、動作主は主語としては現れないものの斜格要素として出現できます。そのようなわけで受動文を、統語的には自動詞的だが、意味的には他動詞的と考える立場もあります(Shibatani 1985など)。一方、逆使役文は、どんなかたちであれ動作主が出現できないので、統語的にも意味的にも自動詞的と言えます。

今回の調査では、次の2点を調べました。

調査結果を以下のリンクに示します。

参照文献

Kulikov, Leonid. 2001.

Causatives. In Haspelmath, Martin, Ekkehard Konig, Wulf Oesterreicher, and Wolfgang Raible (eds.) Language Typology and Universals. Vol. 2. 886-898. Berlin: Walter de Gruyter.
Nedjalkov, Vladimir and Georgij Sil'nickij. 1969.
Tipologija kauzativnyx konstrukcij. In Aleksandr Xolodovic (ed.) Tipologija kauzativnyx konstrukcij. Morfologiceskij kauzativ. 20-50. Leningrad: Nauka.
Shibatani, Masayoshi. 1985.
Passives and related constructions: A prototype analysis. Language 61. 821-848.