女性が働きやすい環境づくりの必要性

 

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1.     

現代もなお、「男は仕事、女は家庭」という考え方はなくならない(佐藤・武石2004)。北九州で男女共同参画社会の実現を目指し、情報発信の拠点である北九州市立男女共同参画センター「ムーブ」2006)は、このような性別役割が規範化されたのは、大正から昭和にかけて、都市部に居住していた会社員・教師・官吏の家庭で、育児の中心的担い手として専業主婦が必要となったからであると述べている。女性の労働力率を年齢階級別にみると、20代後半と40代後半が左右のピークで、30代前半に低下するM字型カーブを描いている(厚生労働省雇用均等・児童家庭局2006)。

確かに30代女性の労働力率は低いが、30年前と比べると20%増加している(内閣府2006)。日本婦人団体連合会(2006)によると、育児介護休業法の施行と、所得の保証によって減らなくなったと見ている。しかし、出産退職が増えた。その原因は、子育てをしながら働き続けられる制度や職場環境や、育児や介護のための労働時間の配慮がないため、女性は仕事か家庭を選ばなければならないからである。現在では女性の高学歴化が進み、仕事を選ぶ女性が増えたので、晩婚化・晩産化が進行し、少子化問題につながっている。本稿では、こうした問題を検討し、女性が働き続けられるには、職場の改善、男性の育児休業の普及、所得保障の改善の必要性を主張する。

本稿の構成は次のとおりである。まず女性が長く働けない原因を報告し、長く働くことができるための対策を紹介する。次に、女性が仕事をやめずに働き続けることによって起こる問題を指摘する。そしてそれらの問題点を解決するには、慣習をなくし、男性の家事・育児の積極的な協力、労働条件の改善の必要性を指摘した上で、どのような対策を具体的にとるべきか提案する。

 

2.      女性が長く働けない原因とその対策

内閣府(2006)によると、妻が仕事をやめた理由は、「家事・育児に専念するため、自発的にやめた」が52%、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」が24%である。一方、過半数の夫が平日に家事・育児をする時間は015分以内である。佐藤・武石(2004)によると、夫の家事・育児の時間が少ない理由は、妻がしてくれるから、長時間労働が近年増えているからである。また、育児休業を取らない理由は、昇給・昇格に響くのではないかと考えられているからだ。妻の育児休業取得率は71%であるが、夫は1%にも満たない(内閣府2006)。このようなことから、家事・育児は女性がやるべき仕事であると一般的に考えられていることがわかる。

この対策として、夫に家事・育児は妻だけがやる仕事ではなく、夫婦で協力してやるべきことであると考えさせなければならない。佐藤・武石(2004)によると、ドイツは日本と同様に育児の負担が妻に偏っているが、これが少子化の要因であるとの問題意識がある。ノルウェーは「パパ・クオータ」の制度の導入で、子どもが1歳に達するまでに夫が4週間育児休業を取らなければ、その分の児童手当てが貰えないようにした。その後、男性の育児休業が大幅に取得されるようになり、2000年には82%の男性が取得した。スウェーデンは、子どもが8歳になるまで両親にそれぞれ240日の休業が保障されている。このように外国では制度を変える事によって夫の育児が積極的に行われている。だから日本でも制度を変える必要がある。例えば、男性の育児休業日数を最低限決め、必ずとらなくてはいけない状態にする、あるいは、会社は育児休業を許可しなければ罰せられるようするなどの対策をする必要があると言われている。しかしこれらを制度化したとしても、日本人男性の育児休業取得率は上がらない。なぜなら、男性と女性の収入を比べた時、男性の収入が多い。また、現在の所得保障では、男性は育児休業を取って子どもを見るより、取らないで働いていたほうが収入は多くなる。このように、夫は育児休業を取らないで妻に家事・育児を任せていたら収入が多くなり、充実した生活を送ることができる。よって、所得保障を改善させて夫に仕事より子育てを選ぶようさせなければならない。では、日本ではこのようなことをすることよって女性は働き続けることができるのか、次節において検討する。

 

3.      女性が働くことによって起こる問題点

現状では、男性が育児休業を取得したとしても、女性が安心して働き続けられる環境になっていない。なぜなら、夫婦で協力して育児休業を取得したとしても、小学校に入学するまでの期間に子どもが一人になってしまう時間が出てくるからだ。昔は、身内や近所の人に子どもを頼んで働くことは可能であった。しかし現代では近所の付き合いが遠退いただけではなく、都市に若い人が集中したことや、少子化で兄弟が減っていることが原因で、子どもを見てくれる人が減っている。その結果、多くの家庭で保育所の利用を希望するようになった

厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課保育係(2006)によると、地域によって違いはあるものの、少子化によって保育所の数が減っているように思われるが、2000年から再び保育所の数は増え、利用児童数が激増した。また、政令指定都市や中核市では予約待ちの児童がいる状態である。つまり、保育所数、受け入れ人数が少ないということである。これを改善しなければ、女性は安心して働き続けることができないのである。また、これを改善できなければ、少子化問題を解決することができない。

 

4.      女性が仕事と家庭の両立に向けて

女性が安心して働ける環境にするために、「男は仕事、女は家庭」の考え方をなくさなければならない。しかし、慣習を変える事はとても大変なことである。洗剤の宣伝で女性を使わずに、男性ばかり使っているものがある。このようなところから、家事は男性もやる仕事であると訴えていく必要がある。

次に、男性の育児休業を当たり前の物にしていき、取りやすくしていく必要がある。そうするために、育児休業を取った人に、インターネットを利用して子育てをして感じたこと、悩みを公開していき、男性に育児休業を取りたい、会社に取らせてあげたいと訴えていく必要がある。そうしていくためには第2節でも述べたように、男女の賃金の差や、所得保障の改善、昇給・昇格の差をなくしていかなければならない。これらを実現させるためには、やはり制度を変えなければならない。制度を変えるために、今の世代の人が会社に育児休業の大切さを訴えていき、会社は政府に訴えていかなければ何も変わらない。今を生きているわれわれが働きかけていかなければ何も変わらない。また、第3節で述べたように保育所も大切である。ただ増設するだけではなく、利用者のことを考え、会社や駅周辺に作っていくことによって、使いやすい。

最後に労働時間の配慮も必要となる。男性も女性も、子どもが小学校に入るまで、時間外労働をなるべくさせないようにすべきである。また、自由な時間に出・退社し、所定の時間数を勤務する、フレックスタイムなどの時間の配慮を積極的に行っていくことも大切である。

 

5.      結論

以上見てきたように、現代も日本の女性にとって働きやすい環境とは言えない。「男は仕事、女は家庭」の考え方をなくさなければならない。そして、保育所の増設、児童手当の改善をしなければならない。それらができた上で、男性に育児休業を取りやすくするための制度と、環境を作っていかなければならない。また、男性に家事・育児に積極的になってもらわなければならない。これらが実現しない限り、女性の労働力率はM字型のままである。少子高齢化になっている現在、女性が安心して長く働ける環境を作っていく必要がある。

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参照文献

北九州市立男女共同参画センター「ムーブ」(2006)『ジェンダー白書4:女性と少子化』明石書店

厚生労働省雇用均等・児童家庭局(2006)『女性労働の分析2005年:中高年女性の就業実態と意識』21世紀職業財団

厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課保育係(2006)「保育所の状況(平成1841日)等について」http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/09/tp0915-1.html

佐藤博樹・武石恵美子(2004)『男性の育児休業:社員のニーズ、会社のメリット』中公新書

内閣府(2006)『男女共同参画白書平成18年版』国立印刷

日本婦人団体連合会(2006)『女性白書2006:格差社会と女性』ほるぷ出版