これまで学習したプログラムは、上から順番に1行ずつ処理を行うというものでした。これは処理の流れの基本形ですが、身の回りを見渡してみてもこれだけでは記述できない処理が多々あります。
例えば、銀行のATMを考えてみましょう。この場合、ATMはインプットした暗証番号が正しいかどうかを判定して、正しければお金の引き出し等に応じ、間違っていれば処理を中断するようになっています。つまりある条件の判定結果に応じて処理内容を分けている(分岐させている)訳です。このような処理を「分岐処理」と言います。さらに、インプットした暗証番号が正しくなかった場合、ATMは番号が間違っている旨のメッセージを表示した上で、操作をやり直すために最初の画面に戻します。これは、操作を何度か繰り返す、つまり「繰り返し処理」に当たります。
プログラミング言語にも、当然この「分岐処理」と「繰り返し処理」の命令が用意されています。これらの命令は、処理を分岐したり、元に戻したりというように処理の流れを制御するので「制御命令」と呼ばれています。本章では、この「制御命令」の使い方を学習します。
ところで、ある処理の論理的手順(…を行ったあと、…を実行する等のような手順)を「アルゴリズム」と言います(本来の数学的定義からすると少しあいまいですが、ここでは問題ではありません)。ある処理のプログラムを書くという作業は、そのアルゴリズムを考案・作成するということです。そしてどのような複雑なアルゴリズムでも、この「分岐処理」と「繰り返し処理」の組み合わせによって記述することができます。ですから、本章の学習を終えれば皆は、プログラミングの基本的な“表現能力”を身に付けることになります。その意味で本章はプログラミング学習の“メインイベント”と言えるでしょう。
なお、一般に、初学者は「分岐処理」は比較的理解できるが、「繰り返し処理」の理解につまずくことが多い、と言われています。本章の後半がそれに当たりますが、どうかじっくりと学習してこの“定説”をくつがえして下さい。